研究概要 |
本研究は,成人性歯周炎患者の歯肉縁下プラークから分離・培養した口腔トレポネーマの病原因子の一端を明らかにすることを目的として,これら口腔トレポネーマの外膜画分を抽出・精製し,構造を調べるとともに,同タンパク質の生物学的諸活性について,歯周組織構成細胞である歯肉上皮細胞,歯肉線維芽細胞ならびに歯根膜線維芽細胞を用いて検討しようとするものである.本年度は以下の結果が得られた.1.Treponema denticola, Treponema vincentiiおよびTreponema mediumは,trypticase soy-yeast extract-gelatin-volatile fatty acids-serum(TYGVS)により嫌気的に大量培養し,得られた菌体を界面活性剤であるTriton X-100を用いて外膜抽出画分(OME)を得た.2.マウス Toll様受容体(TLR)を強制発現させたNF-kBレポーター遺伝子導入Ba/F3細胞株を用いて,得られたOMEのNF-kB活性化をルシフェラーゼアッセイにて検討した.その結果,いずれのトレポネーマ菌種由来のOMEもマウスTLR2発現Ba/F3細胞(Ba/mTLR2)において明確な活性を示したが,マウスTLR4/MD-2発現Ba/F3細胞(Ba/mTLR4/mMD-2)では同活性はみられなかった.3.OMEは,プロテアーゼKあるいはリポプロテインリパーゼ処理しても活性強度に変化はみられなかった.4.OMEの細胞活性画分を明らかにする目的で,T.denticola由来OMEをさらにTriton X-114で処理し,高速液体クロマトグテフィー(HPLC)にて分画すると,Ba/mTLR2を活性化する画分が得られた.平成16年度は,T.vincentiiおよびT.medium由来OMEのHPLC分画を行い,これらHPLCで得られた画分について,OMEに含まれるTLR2活性画分の構造を検討するとともに,歯周組織構成細胞に対する細胞活性化についても併せて調べることを計画している.
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