メカニカルストレスが正常な骨形成の誘導とその維持に重要であることはよく知られているが、その骨形成過程の分子メカニズムについてはほとんど明らかにな.っていない。マウス頭頂骨縫合部の器官培養系を用いた予備的探索から、メカニカルストレス負荷時に発現変動する遺伝子をいくつか単離しているが、その中で特に既知遺伝子である核内転写因子Miz1(Msx2-interacting zinc finger 1)に着目した。本プロジェクトは、Miz1がメカニカルストレスによる骨形成過程でどのような役割を担う分子であるか、確定することを目的とする。 まず、培養骨芽細胞株MC3T3-E1にメカニカルストレスを負荷した場合のMiz1発現をRT-PCR法により検討した。MC3T3-E1はマウス頭蓋骨由来の骨芽細胞株であるが、メカニカルストレスの負荷による石灰化の亢進が知られている。Miz1発現は、対照と比較してメカニカルストレス負荷時に優位に上昇しており、器官培養系のみならず培養骨芽細胞にメカニカルストレスを負荷した場合も発現上昇が確認された。 次いで、Miz1 cDNAの下流にMyc-tagを融合させた発現ベクターを構築し、COS-1細胞にリポフェクション法により一過性に導入した。導入2日後細胞を回収し、抗Myc抗体を用いたウエスタンブロット法によりMiz1-Myc融合蛋白質の発現を確認した。さらに骨形成過程に果たすMiz1の機能を明らかにする目的で、培養骨芽細胞株MC3T3-E1にMiz1-Myc cDNAを導入し、Miz1-Mycの安定発現株を10クローン得た。これらのクローンを用いて、Miz1の過剰発現が骨芽細胞の分化にどのような影響を与えるか、現在検討中である。また、Miz1のポリクローナル抗体を作製した。
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