研究概要 |
メカニカルストレスが正常な骨形成の誘導とその維持に重要であることはよく知られている。我々は、骨形成を担う骨芽細胞の分化および石灰化に機能する分子を探索する目的で、マウス頭頂骨縫合部の器官培養系に張力刺激を施す系で、メカニカルストレス負荷時に発現変動する遺伝子をcDNAマイクロアレイ法により探索した。その結果、未知遺伝子を含むいくつかの遺伝子を単離したが、その中で特に既知遺伝子である核内転写因子Miz1/PIASxβに着目した。本プロジェクトは、Miz1/PIASxβが骨芽細胞の分化あるいは石灰化にどのような役割を果たす分子であるか確定する事を目的とする。 まず、培養骨芽細胞株Mc3T3-E1にメカニカルストレスを負荷した場合のMiz1/PIASxβ発現をRT-PCR法により検討した。MC3T3-E1はマウス頭蓋骨由来の骨芽細胞株であるが、メカニカルストレスの負荷による石灰化の亢進が知られている。Miz1/PIASxβ発現は、対照と比較してメカニカルストレス負荷時に優位に上昇しており、器官培養系にける結果が培養骨芽細胞においても再現された。また、MC3T3-E1を石灰化培地中で4週間培養し石灰化を促進する系においても、一過性(7日目がピーク)の発現上昇を確認しており、Miz1/PIASxβが、骨芽細胞の分化あるいは石灰化の過程で何らかの機能を果たしている事が示唆された。 そこで、RNAi法により内在性のMiz1/PIASxβ蛋白質発現を抑制させたMC3T3-E1クローン株を樹立した。本プロジェクトにより作製した抗Miz1/PIASxβポリクローン抗体を用いたウエスタンブロットの結果から、特に発現抑制の著しかった2つのクローン株を選択し、石灰化培地中で4週間培養したところ、対照株と比較して顕著な石灰化の抑制が認められた。一方、Runx2,オステオカルシン等の骨芽細胞分化マーカー遺伝子の経時的発現は、対照株とほぼ同様に認められた。以上の結果から、Miz1/PIASxβは、骨芽細胞の分化より、むしろ最終段階である石灰化に機能している可能性が強く示唆された。
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