平成15年度は、主にCa^<2+>濃度変化に応じたカルシトニン(CT)分泌へのDREAMの関与について解析を行った。 1.実験に使用する各種コンストラクトの構築:ヒトRNAよりDREAM cDNAを合成し、野生型と、Ca^<2+>結合能を欠失した変異型のcDNAを作製した。それぞれを、GST或いはGFPとの融合蛋白質発現用ベクターに組み込んだコンストラクトを構築した。また、DREAM cDNAをそれぞれセンス、アンチセンス方向に哺乳類細胞発現用ベクターに挿入したものも作製した。 2.発現・精製したDREAMのCa2+濃度依存的DNA結合能の検討:発現・精製したDREAMの野生体及び変異体について、Ca^<2+>濃度依存的なDRE配列特異的結合能の変化をゲルシフトアッセイにより検討した。プロダイノルフィン及びCT両遺伝子のDRE配列において、いずれも、野生体ではCa^<2+>濃度依存的なDNA結合が見られたが、変異体ではそのCa^<2+>濃度感受性が消失していた。 3.CT分泌性細胞株を用いた解析:CT分泌性細胞株として当該研究領域で広く用いられている、ヒト甲状腺髄様癌由来細胞株(TT)を用いて種々の解析を行うために、まずRT-PCR-サザンブロッティング法及びウエスタンブロッティング法により同細胞株の内在性DREAMの存在を確認した。次に、DREAM野生体、変異体それぞれをTT細胞に過剰発現させ、カルシウムイオノフォア投与等による細胞内Ca^<2+>濃度変化に伴うCT分泌量の変化を検討したところ、Ca^<2+>濃度上昇により変異株においてはCTの発現と分泌は減少していた。また、アンチセンスDREAMを導入した場合においては、Ca^<2+>濃度上昇によってCTの発現と分泌は増加しており、DREAMの発現抑制に伴い、DREAMによるCTの転写抑制が減少したためであると示唆された。 これらのことから、DREAMのCT分泌調節への関与は確実であると考えられた。
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