未分化な骨芽細胞で発現する細胞接着分子POEM(pre-osteoblast EGF-like repeat protein with MAM domain)は、以前の研究から、分子内のRGD(Arg-Gly-Asp)配列を認識するα8β1インテグリンを介して、骨芽細胞の接着、伸展および生存を支持する事を明らかにした。また、C末側のMAMドメインは分子局在性を決定するのに重要であり、RGD配列と並ぶ細胞接着活性を示すことがわかった。そこで、MAMドメインの役割を分子レベルで明らかにするために、MC3T3-E1細胞培養3日目のライブラリーに由来するレトロウイルスを用いたsignal sequence trap法を行なった。その結果、MAMドメインに会合する細胞外タンパク質をコードする候補遺伝子を見い出すことができた。それらの候補遺伝子のなかで、未分化な骨芽細胞に発現する細胞接着レセプター分子CD44は独立した2クローンで同定された。そこで、CD44とPOEMとの相互作用の可能性について検討した。免疫沈降法によってCD44とPOEMの分子間の会合が確認された。リコンビナントタンパク質を用いたpull downアッセイによってPOEMとCD44は直接会合していることが明らかになった。さらに共焦点レーザー顕微鏡による免疫蛍光染色の観察結果から細胞表面上での局在が一致することが確認され、POEMはCD44の新規リガンドであることが証明された。以上の研究成果について、現在論文作成中である。骨芽細胞におけるCD44の重要性が示唆されながらも、明確な機能や生理的リガンドについて明らかにされていない。インテグリンとCD44の2つのレセプターを共有するリガンドPOEMが細胞外からの情報伝達因子として、POEMに特異的な情報伝達が何であるか、引き続き解析している。
|