これまでの当科で治療を行ってきた口腔扁平上皮患者で頸部リンパ節転移を認め、術前にエコー検査を施行している症例を対象にretrospectiveに検討を行った。転移リンパ節における内部エコーの出現とリンパ節での腫瘍の占拠範囲についての検討では、占拠範囲が1/3以下では、内部エコーの出現は認められず。また、リンパ節の短径と腫瘍は占拠範囲との関連を見てみると短径が大きくなるほど腫瘍の占拠範囲が多くなる傾向が認められた。つぎに、内部エコーの出現がどんな病理組織学的所見と関連しているのか検討した。転移巣での分化度と内部エコーの出現いついては、明らかな関連は認められなかった。そこで、さらに細かく腫瘍細胞の角化や間質の線維化との関連を検討した。それぞれ単一項目では明らかな関連は認められなかったが、角化もしくは間質の線維化のどちらか一方がみられたリンパ節と内部エコーの出現との間で統計学的に有意差が認められ、角化もしくは線維化どちらか一方が認められる場合に内部エコーが出現していることがわかった。原発巣と転移巣との病理組織学的所見の検討を行いったところ原発巣が高分化であるほど転移巣での角化は強く出る傾向があった。また、原発巣の浸潤様式と転移巣での間質の線維化との関係については山本・小浜分類3型で線維化が強く見られる傾向にあった。内部エコーの出現は転移巣での腫瘍細胞の角化もしくは間質の線維化と関連しており、原発巣の病理組織学的所見を画像診断の参考とすることで診断率が向上する可能性が示唆された。そこで、involcrinとflaggrinの免疫組織化学染色を行い、原発巣の角化の潜在的能力と転移病巣での角化や間質の線維化との関連について検討をおこなった。しかしながら、involcrinとflaggrinの免疫組織化学染色において原発巣の染色性から転移巣の角化や間質の線維化を予測しうるような関連性を認めることはできなかった。これまでの結果をもとにさらに検討を続けていく予定である。
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