当大学口腔解剖学教室の研究者に今回の研究に関する知識や技術の提供の承諾を得、解剖体7体を使用した。剖出後の顎舌骨筋部と比較するために、剖出前にそれらのCT撮像を行い、再構成して得られた横断像および冠状断像から顎舌骨筋部の不連続部とそれに関連した変化について評価した。その後、顎下部皮膚側より剖出をおこない、顎二腹筋の走行を確認後、顎舌骨筋を観察し、筋の走行、筋束の状態、筋に入り込む神経や血管、および筋を通過する神経あるいは血管について評価した。剖出の各段階でデジタルカメラにて特徴的な剖出所見を記録した。その結果、顎舌骨筋の不連続部の発現頻度は高く、また画像上でも描出されることがわかった。これらの検討結果については、平成16年の画像診断臨床大会にて報告した。 一方で顎舌骨筋を経由する病変の検討について資料収集、情報収集をおこなった。国内では特に東京歯科大学歯科放射線学講座の佐野教授、音成助手の研究協力を得、症例の収集を行った。国外においては、ハーバード大学のDr.Curtinのもとを訪問し、再び研究協力を依頼した。そしてハーバード大学付属マサチューセッツ眼耳科病院(Massachusetts Eye and Ear Infirmary)放射線科の種々の症例を収集した。当初は顎舌骨筋の描出に関する検討をする予定であったが、それに先立ちこれまでに撮像された病変の検討をする必要があり、収集した症例により、顎舌骨筋を経由する病変の波及経路について、検討した。その結果、近年の多列検出器CTや高解像度T1強調MR画像により、顎舌骨筋と病変との関係および波及経路についての描出が十分に可能であることがわかった。これについては、先の解剖体による検討とあわせて、国内では頭頸部放射線研究会、および国外では北米放射線学会にて報告した。北米放射線学会では、Certificate of Merit賞受賞となった。
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