口腔粘膜への抗がん剤による細胞毒性の影響を調べ、歯科医療者の専門的介入による効果をデータを分析し、予測、検証した。 対象者は、某大学医学部附属病院において乳腺外来で受診されている乳癌患者、日本歯科大学附属病院口腔外科で受診されている舌癌、歯肉癌、口底癌の患者に対して行った。日本歯科大学では、入院中、退院後も定期的に口腔内ケアを行っている。 調査内容は、歯式、プロービングデプス(PD)、出血点(BOP)、ミュータンス菌検査、唾液緩衝能検査、口腔水分計、食塩味覚閾判定テスト、唾液湿潤度検査、曵糸性、アンケートを行った。 結果および考察として、1.歯科治療不可能の先入観が口腔内状況を悪化させていた。口腔ケアの重要性の動機付けが必要であった。2.塩分感覚低下の症状がみられた。患者自ら家事を担当していることが多く、塩分摂取指導の必要性があった。3.口渇感、味覚変化が生じていた。口腔内清掃の倦怠による怠慢、ジュース類による味覚のごまかし等、によりう蝕リスクが増大しており、口腔内ケアと水分の補給が重要であった。4.化学療法による尚早のPDの大きな変化はみられなかった。このことから、口腔ケアによる介入は十分に意義をなすことが考えられる。5.BOPの値が、化学療法中よりも化学療法を始める前後の方が大きくなる傾向がみられた。このことから、化学療法中は、免疫力が低下し、免疫反応の現れである出血による反応が減り、つまり、抵抗力が低くなったことが考えられた。まさしく、この時期に口腔ケアが必要であることがわかった。
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