研究概要 |
【目的】本研究は、臨床的にも有用と考えられる非侵襲的に酸化ストレスを評価可能なin vivo(L-band ESR)を用い、生体に投与したニトロキシルスピンプローブが生体における酸化ストレスの産生亢進により還元を受け減衰する原理を応用することで、顎関節および関節周囲に存在する酸化ストレスの評価をin vivoで測定した。さらに、顎関節症の病因の一つであるクレンチングやブラキシズムに伴う顎関節局所の虚血再灌流障害により発生すると考えられるフリーラジカルを同様の方法にて測定をおこなった。 【方法】顎関節炎ラットモデルとして各種炎症性サイトカイン(IL-1β,TNF-α;1×10^7IU)をそれぞれ、片側顎関節腔に注射することで顎関節炎を誘導した(関節炎群)。対照として生理食塩水を注入したラット(コントロール群)を用いた。スピンプローブとして3-carbamoyl-2,2,5,5-tetramethylpyrrolidine-1-oxyl(C-PROXYL;140mM)を尾静脈より投与し、関節領域でのC-PROXYLの減衰速度をL-band ESR法により測定した。また、サイトカイン注射後、継続的に長時間顎関節に虚血負荷を加えた直後の酸化ストレスレベルと短時間の虚血負荷を加えた直後の酸化ストレスレベルの測定を行った。 【結果及び考察】顎関節領域のC-PROXYLの信号強度が示した代謝動態は2-コンパートモデルを示し、顎関節炎群はコントロール群に比べIL-1β投与群では12時間値、TNF-α投与群では48時間でC-PROXYLの減衰速度の亢進が観察された。また、TNF-αを投与し長時間の虚血負荷を加えた群ではC-PROXYLの減衰速度の亢進は認められず低下する反応が示されたことから、顎関節に加わるメカニカルストレスの状態により各種フリーラジカルの発生に違いがあり、また長時間の虚血状態による生体内防御機構が作用し有害な活性酸素による障害を消去する可能性も示唆された。
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