研究概要 |
我々は被爆を伴わない嚥下機能評価法の開発と解析として,頚部で聴取できる嚥下音の解析を行うことのできるシステムを開発中である. このシステムの目的は,患者の負担および被爆量の低減のために,X線透視検査法(Video fluorography : VF法)による経過観察の一部を頚部聴診検査に置き換えることである.また,嚥下障害のスクリーニングとして外来やベッドサイドでも随時行える検査方法としての頚部聴診検査法を確立することである. 本研究の特色は,電子聴診器を使用することにより,パーソナルコンピュータにダイレクトにデータが保存されることである.保存されたデータは音響解析プログラムによって解析され,各被検者の嚥下音の特徴を明らかにする.また,ディジタルデータさえ取得できれば遠隔地の患者においても,インターネットを使って瞬時にそのデータを基に解析することが可能であることも特色と言える. 現在の段階において,正常被検者のデータから,嚥下音には一定のフォルマントが存在することが明らかとなった.今後の研究の被検者は,術後性嚥下障害患者から中枢性嚥下障害者にいたるものすべてを対照とし,そのデータの解析によって,システムの再現性や嚥下音の特徴,傾向を明らかにする.嚥下障害患者における嚥下音解析を行った研究は今までになく,この方法の確立により頚部聴診法の有用性と利用法が明らかとなり,VF検査のpretestとして施行可能になると予想される.また,リハビリの効果などによる経時的変化が看護師や衛生士にも行うことが可能となり,誤嚥の防止にも役立つものと予想される. 以上によって,VF法検査に代わる方法が確立でき患者の負担や被曝が軽減される.
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