研究概要 |
1.頸部聴取音解析システムの構築と再現性検証 頸部嚥下音を聴取する頸部聴取音解析システムの構成は,電子聴診器をFFTアナライザに接続し,そのFFTアナライザをパーソナルコンピュータに接続した.電子聴診器から得られた頸部音はパーソナルコンピュータにWAVファイルとして保存した.音響解析ソフトを使用してフォルマント解析を行った.対象は健常被検者1名.電子聴診器を頸部片側の輪状軟骨直下の気管の側方に同時に当て,「あ」と「い」を発声させ,それぞれのデータを聴取,保存,周波数解析し,フォルマントを検出.各発声の各フォルマント毎の平均値を算出し,その平均値と標準偏差から変動係数を算出,検証した.その結果,変動係数は1〜8%であった. 2.健常被検者と片側頸部郭清術後患者の嚥下音比較 前述した頸部聴取音解析システムにもう1本電子聴診器を増設し,同時に両側で聴取,記録した.対象は健常者8名と口腔癌原発の片側頸部郭清術を施行した術後患者6名.2本の聴診器を頸部両側の輪状軟骨直下の気管の側方に同時に当てた状態で,空嚥下を施行させ嚥下音を取得,保存,周波数解析し,フォルマントを検出.分散分析およびSpearmanの順位相関で検定した.その結果,健常被検者の左右側の嚥下音に有意差は認めなかった(P>0.3).各被検者間の嚥下音においては有意差を認めた(P<0.001).また,片側頸部郭清術後患者の患健側の嚥下音に有意差は認められなかった(P<0.001). 以上より,嚥下音にはフォルマントが存在している事が明らかとなった.同一被検者の左右側の嚥下音に有意差は認められず,頸部聴診は左右側どちらでも差がないことが明らかとなった.被検者間の嚥下音には有意差が認められた.片側頸部術後患者の患健側嚥下音に有意差が認められなかった事から,聴診器で聴取できる嚥下音は頸部形態に影響を受けない可能性がある事が示唆された.
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