現在使用されている接着性歯科材料の多くに採り入れられている光量合型レジンではラジカル発生による重合開始機構が用いられているが、この重合開始時に発生するラジカルの細胞への影響についての研究を主体として行った。 まず、ラジカルに用いられているカンファーキノンおよび三級アミンの細胞毒性濃度をミトコンドリア内のコハク酸脱水素酵素(SDH)活性を用いで評価した。これにより細胞毒性を示さない濃度を決定した(カンファーキノン0.4mM、三級アミン0.1mM)。 細胞のラジカルへの反応をより詳細に検討するため、細胞がさまざまな刺激を受けた際に誘導されるというNF-kBの細胞核内での転写効率への影響をジーントランスポーター法により調べた。すなわち、あらかじめ細胞内にNF-kB結合部位とルシフェラーゼ活性発現部位を含むプラスミドを細胞核内にトランスフェクションさせておき、カンファーキノンと三級アミン添加直後に光照射を行い、ラジカルを発生させた。NF-kBは通常4〜6時間後に誘導されることから、反応後4〜6時間後にルレシフェラーゼ活性の測定を行いラジカルによる影響を調べた。その結果、カンファーキノン、三級アミン、光照射これらのいずれかがが単独あるいは組み合わされて存在するとNF-kBの誘導が阻害されることが判明した。特にカンファーキノンの存在下で、NF-kBの誘導が顕著に阻害された。 次に、LPS(グラム陰性桿菌の細胞壁成分)で刺激を受けた細胞で誘導されたNF-kBへの影響について検討した。その場合もカンファーキノン、三級アミン、光照射これらのいずれかが単独あるいを組み合わされて存在するとNF-kBの誘導が阻害され。カンファーキノンの存在下で、NF-kBの誘導が顕著に阻害されたことも同様の傾向であった。
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