研究概要 |
保存修復分野においてセラミックスインレー修復等各種審美に関する研究が行われている。当講座では、精度の高い加圧成形セラミックス鋳造法であるIPS Empress Iに着目し、その物性強化および臨床応用を目的に優れた適合性を持つ貴金属薄膜コーピングCAPTEK(CAPTEK Precious Chemical Inc.)にセラミックス鋳接を試み、新たなセラミックス-メタルの複合材料の開発および評価検討を行っている。 コーピング材料CAPTEK自体の引張り強度・伸び率は140±22MPa・8%であった。曲げ強さおよび破壊靭性はセラミックス単体、セラミックス鋳接試片および陶材焼付試片各々について検討したところ、荷重負荷がセラミックスの場合の試作複合体は鋳接・焼付両試片とも、単体の曲げ強さより有意に高かった。また、荷重負荷がメタルの場合の曲げ強さはセラミックスサイドより有意に低かった。破壊靭性値はセラミックス単体と複合体と比較して、有意差はあったものの、0.9±0.08〜1.57±0.06MNm_<-3/2>の範囲にあり、比較的安定した値であった。また、曲げ試験後の試片破壊様式はセラミックスがメタルから剥がれ分離する形状はほとんど見られなく鋳接でも焼付でも接合状態は良好であることが伺えた。 このことに対する精査として、EPMAを用いたCAPTEKとセラミックスの接合界面付近の両構成成分、その元素動態および接合機構の評価を行った。その際の条件は、接合面の機械的結合力向上のためCAPTEKシステム付属のCAPTEK UCP(Adhesive)の使用有無で分類して、接合界面の観察(SEM,COMP)およびEPMA/WDS Mapping法にて評価検討した。実験に供した材料の構成成分はCAPTEK : Au88.0%,Pd4.6%,Pt4.1%,Ag2.8%,Ir0.5%,Ru<0.05%,Re<0.05%,IPS Empress I : SiO_2-Al_2O_3-K_2O,Vintage Halo : SiO_241.5%,Al_2O_314.9%,K_2O7.87%,Na_205.21%,SnO22.3%,ZrO_20.66%,ZnO0.03%,TiO_22.13%であった。接合界面の観察(SEM,COMP,1000倍拡大)ではUCP使用群では良好な接合状態が確認できたのに対し、UCP未使用群は接合界面に明らかなGap形成が認められた。また、UCP使用群はメタルサイドにUCPによる凹凸が明らかに確認でき、セラミックスがその凹凸にうまく絡み合って接合していた。WDS mapping法による両界面付近の構成元素動態では、一般的にセラミックスと金属の化学的結合に関与するといわれている構成元素Sn,In,Fe等は接合界面に析出しておらず、接合は化学的因子よりも機械的勘合が主であり、その他、溶解拡散、金属結合の整合性等についての解明する必要性が示唆された。
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