前年度はマウス骨髄から分離した破骨細胞前駆細胞を用いてCD137による破骨細胞の分化・成熟への影響を調べ、CD137がその分化・成熟を顕著に阻害することを明らかにした。しかし、動物個体を考えた場合には組織中の様々な細胞が影響し合っているので、種々の細胞が混在し合っている場合における破骨細胞前駆細胞への影響を調べた。また刺激源として、骨吸収に関連し、根管系にも存在する主な嫌気性菌Porphyromonas gingivalis (P.g.)を生菌にて使用した。具体的には破骨細胞を多く含むマウス骨髄細胞全体と生直後のマウス頭蓋冠の骨芽細胞の共培養系に細菌感染させた。まず、共培養の開始時点に感染させると、破骨細胞の形成が顕著に抑制された。この効果は死菌でも同様に得られたが、菌の抽出物を用いた場合には過剰の細胞増殖が認められた。これは菌を破壊したことで抗原物質が大量に培養液中に暴露され、T細胞等の免疫担当細胞が刺激された結果であると考えられた。次に、感染を共培養の開始後におこなった。その結果、開始後2日までに感染させた場合には破骨細胞形成の抑制が観察されたが、それ以降に感染させても抑制効果は認められなかった。また、破骨細胞前駆細胞であるM-CSFで分化させたマクロファージにおいても、2日以降は抑制されず、逆に成熟を促進する結果となった。よって、菌体成分は破骨細胞前駆細胞に直接作用し、分化の初期段階においては抑制的に、後期においては促進的に働くことが示唆された。また、共培養系ではこのような促進効果は認められなかったことから、分化・成熟の後期においてもT細胞等による抑制機構が働いているものと考えられた。以上、CD137に関連した骨吸収抑制機構について、様々な点が明らかとなった。
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