【緒言】ヒト根尖病巣の病態形成には、炎症性及び破骨細胞関連サイトカインが関与することを解明した。次に、根尖病巣の発症に関与するヒト歯根膜に対し、口腔内常在細菌による刺激またはメカニカルストレスを与えたところ、歯根膜は炎症性及び破骨細胞関連サイトカイン産生能を有していた。このことから、これらサイトカインが歯周組織の局所炎症や骨吸収に影響を与える可能性が示唆された。このため、正常マウス及びサイトカイン遺伝子欠損マウス(以下、KOマウス)を用い、根尖病巣マウスモデルを作製した結果、根尖病巣は対照群に比べ感染群の正常マウス及びインターフェロン-γ(以下、IFN-γ)KOマウスで増大した。そこで、新たに腫瘍壊死因子-α(以下、TNF-α)KOマウスを加え、画像解析と免疫学的検討を加えた。 【対象及び方法】TNF-αKO、IFN-γKO及び正常マウスの臼歯歯冠部を削除、P.intermedia及びP.gingivalisに感染させ、感染群とした。感染21日後、下顎骨をマイクロCTで撮影した。3D画像解析ソフトを用いて3D画像構築を行い、3方向より断層像を作成し、それぞれについて数枚おきに病巣断層像を切り出し、補間抽出により病巣部を抽出した。そして、病巣全体を3D画像構築し、感染群と対照群のそれぞれ病巣の体積を測定した。また、根尖部のエックス線透過像の体積と歯根部分の体積を計測し、骨吸収比率を算出、比較検討した。 【結果】対照群に比べ感染群の各マウスで、骨吸収比率は有意に増加した。しかし感染群マウス間では、RBRに有意な差を認めなかった。 【考察及び結論】根尖病巣に対して、マイクロCTを用いた画像評価方法は、三次元的評価を可能とした。また根尖病巣の病態形成には、サイトカインネットワークを介した様々な経路の関与が予想され、IFN-γとTNF-αの直接的な関与の可能性は少ないと考えられた。
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