LED照射器による充填用コンポジットレジンの硬化が良好な成績を示すことは既に報告されているが、ボンディング材などの中には全く硬化しないものも存在した。すなわち、充填時にLED照射器を用いると、接着システムによっては歯質への接着に問題を生じる可能性がある。本研究では、LED照射器を用いてコンポジットレジン充填を行った時の象牙質への接着について、照射光源がハロゲンランプあるいはキセノンランプの場合と比較した。 実験方法として牛前歯象牙質を露出させて包埋した後、耐水研磨紙にて研磨した。直径4mmの円形にパンチングした両面テープを貼付し、内径4mmの金属製モールドを設置した。その後、業者指示に従って各接着システムにて象牙質面の処理を行った。その後モールド内にコンポジットレジンを充填し、各光照射器により照射を行った。試料は37℃の水中に保管し、24時間後に煎断試験を行った。試料数は各条件につき10個ずつとし、得られた値はTukeyの多重比較にて統計処理を行った。 その結果、メガボンドとAQボンドではLED照射器で照射を行った時に有意に接着強さが低くなった。フォトボンドとユニフィルボンドでは全ての照射器間で有意差は認められなかった。シングルボンドではLEDとキセノン照射器間にのみ有意差が認められた。全ての接着システムでハロゲンとキセノン照射器間の差は認められなかった。 メガボンドとAQボンドにはカンファーキノンよりも低い波長に感応する光触媒が含まれている。そのため、光の波長幅が狭いLED照射器では低い接着強さを示したと考えられる。しかし、その他の接着システムでは照射器間の差が認められないことから、光触媒をカンファーキノンのみとした接着システムを使用した場合にはLED照射器でも問題のない接着強さが得られることが確認された。
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