研究概要 |
ヒト骨格筋では筋肉が収縮する際にエネルギーを供給する物質のひとつであるクレアチンリン酸(PCr)濃度と酵素組織化学的方法による筋線維組成との間に相関があると言われている.咬筋も骨格筋の一つであるが,P31-Magnetic resonance spectroscopy(MRS)によるPCr濃度とATPase染色による筋線維組成の関連性を検討した結果,他の骨格筋とは異なる結果が得られた.その原因として,咬筋の筋線維組成,筋収縮タンパクであるミオシン分子による表現型が複数存在し,複雑な組成をもつためと考える.そこでPCrをより直接的に分析・定量する方法として平成15年度はPCr濃度を生化学的に測定する方法を確立させることを目的として研究をおこなった.本年度は筋収縮タンパクのミオシン重鎖アイソフォームの分離方法を試みた.ミオシン重鎖アイソフォームの分類には免疫染色や電気泳動法などがあるが,今回はSDS-PAGE法および銀染色による分離条件について検討した.SDS-PAGE法では分離可能な至適ゲル濃度が存在するが,現在のところまだ検討中である.また分離後のタンパク質の検出法に検出感度が高い銀染色法を選択したが,銀染色は定量性がないため検出法については更なる検討が必要であると考える.顎節症の主症状である筋疲労は咬合,偏咀嚼やブラキシズムなどの悪習癖などが原因といわれており,筋血流量の低下も報告されている.解剖学的あるいは生理学的観点から考えると,筋線維組成も何らかの形で関与していると考えられるため,本研究によりその関連性を明確にできるのではないか.
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