研究概要 |
当初,唾液中のグルタミン酸濃度,また被験食品によってはイノシン酸濃度を味覚センサにより測定する予定であったが,唾液中の無機イオンやタンパク質,とくにNaClがセンサのうまみ成分に対する応答に影響し,正確なデータを得られないことがわかった.次段階として,被験食品中のうまみ成分を咀嚼前後で測定して比較することを検討したが,被験食品中のうまみ成分以外の無機イオン,タンパク質などの影響の大きさ,固形であるサンプルを液状化することの困難さ,さらに1つの食品でも部位が異なればうまみ成分の濃度が変化するなどのことから,こちらの場合も味覚センサを用いたうまみ成分の抽出は困難であると判断された.こういったことから,被験食品にはできるだけ単純な試料をつくることからはじめるという考えに至った.そこでまずベースとして味成分に対して不活性な材料であるパラフィンワックスを用い,これに純粋な呈味成分を溶かし込んで被験食品を製作することとした.呈味成分にはうまみ成分であるグルタミン酸,および酸味成分であるクエン酸を選択したこのパラフィンワックス中の呈味成分は,被験食品と水を同時に温めることによりパラフィンに不溶である呈味成分が水溶液として抽出される.この水溶液中の呈味成分の濃度を再現性,精度ともに信頼性の高い蛍光分光光度計で測定し,被験食品咀嚼前後で比較を行う予定である.現在,被験食品の大きさ,呈味成分の濃度を決定し,正常有歯顎者を被験者として再現性,方法の妥当性の検討を行っている.
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