研究概要 |
顎関節症のうちの一つである顎筋膜疼痛症候群は,咀嚼筋疼痛とそれによる開口障害を伴う.原因はいまだに科学的に解明されてはいないが,「ブラキシズム」のような強烈な咀嚼筋の運動が主原因であるとしばしば信じられている.しかしながら,それを科学的に証明しようと,健常者に任意に睡眠中ブラキシズムと同じだけ(もしくはそれ以上)の咀嚼筋運動をさせて顎筋膜疼痛様の筋痛を誘発する実験が数多く行われたが,成功することはなかった.それどころか,咀嚼筋に全く症状の無い習慣性ブラキシズムを持っている人の方が,顎筋膜疼痛患者より睡眠中咀嚼筋活動量が40%以上多いという報告もある.本研究は「ブラキシズムは咀嚼筋疼痛を誘発する因子のうちの一つではあるが,それ自身単独で筋疼痛を起こすことはない」という仮説に基づき,種々の条件下における睡眠中ブラキシズム量と咀嚼筋疼痛を客観的・主観的に測定し,因果関係について検討することを目的とした. 現在までに,実験室(シールドルーム,ベッド)に備え付けの咀嚼筋活動測定装置を設置し,また自作の筋活動量解析プログラムを作成し,形態を異にする種々のオクルーザルスプリント装着中における咀嚼筋活動量を測定した.これにより得られた,スプリントの形態がブラキシズムに与える影響を報告した.今後は筋活動量のみではなく,咀嚼筋疲労度,筋疼痛を可及的客観的に捉える計測方法を開発してゆき,研究課題の「ブラキシズムと顎筋膜疼痛の関連性」を探求していく予定である.
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