研究概要 |
チタン-銅(10%含有)合金は、チタンの融点低下ならびに快削性向上の観点から有用なことは既に報告されている。しかしながら歯科鋳造用として使用するには機械的性質、特に延性の改善が必須である。研究代表者らは、現在までに数種類の添加元素に着目しチタン銅系三元合金の機械的性質の評価を行ってきた。本年度ではチタン銅合金への添加元素としてパラジウムに着目し、試作合金鋳造体の機械的性質を評価し、添加効果(Pd:1.0,3.0,5.0mass%)について検討した。 1.0〜5.0%のパラジウムの添加による耐力および引張強さに顕著な差異は認められなかった。伸びは1.0,3.9および5.0%の添加により増加する傾向を示し、特に5.0%添加試料(4.0%)ではTi-10Cu二元合金(1.9%)と比較し有意に大きな伸びを示した。また鋳造体のビッカース硬さは、各添加試料ともに鋳造体表層から150〜200μmまでは鋳型材との反応層が認められ、表層から200μm付近の硬さは300前後の値を示しTi-10Cu二元合金と比較し有意な差異は認められなかった。本研究において伸びの大きかった5.0%パラジウム添加試料の引張試験後の破断面SEM観察では、延性破壊像の典型的なディンプル様構造が認められた。微細組織観察ではすべての試料において共晶粗織が観察された。 本研究において、Ti-10mass%Cu合金への1.0〜5.0mass%のパラジウム添加は、機械的性質特に延性の向上が認められ、歯科鋳造用合金として応用可能であることが示唆された。今後、鋳造性や耐食性評価を行い臨床応用への可能性について検討する必要があると思われた。
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