研究概要 |
チタン-銅(10%含有)合金が、チタンの融点低下ならびに快削性向上の観点から有用なことは既に報告している。しかしながら歯科鋳造用として使用するには機械的性質、特に延性の改善が必須である。研究代表者らは現在までに数種類の添加元素に着目し、チタン銅系三元合金の機械的性質の評価を行ってきた。なかでもチタン-銅(10%含有)合金にクロムやパラジウムを数%添加した試作合金鋳造体の機械的性質を評価したところ、延性の向上が認められたが何れも3〜4%程度であった。 本年度においては、三元合金の最適な組成比を決定するためにチタン-クロム二元合金の特性の解明を行った。クロムは5〜20mass%の範囲で5%ずっ添加した。Ti-10Cr, Ti-15CrおよびTi-20Crの耐力、引張強さは870〜1,000MPaであり、Ti-5Crと比較し有意に大きな値を示した。伸びはTi-10Crでは1%程度であったのに対し、Ti-5Cr, Ti-15CrおよびTi-20Crはそれぞれ9.9,12.4,11.6%と大きな伸びを示した。破断面のSEM観察からもTi-10Crは壁開破面を呈し、伸びの大きかった5,15,20Cr添加合金では、ディンプル様構造が認められた。またTi-5Cr, Ti-15CrおよびTi-20Crの硬さは、鋳造体表層50μm付近で370〜400Hvを示し、内部に進むつれて硬さは低下し、表層150μmでほぼ一定となった。しかしながらTi-10Crでは鋳造体表層50μmでは420Hvであったのに対し、内部に進むにつれ硬さは上昇し、表層150μmで540Hvを示した。以上より、チタンヘの15および20mass%のクロムの添加は、耐力,引張強さおよび伸びも大きく、機械的性質の向上に有効的であることが示唆された。
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