近年、歯科インプラント治療において骨移植術を併用した方法が多数報告されているが、現在でも十分に用件を満たした移植法はなく、代用となる合成骨移植材料の重要性が指摘されている。そこで申請者はトロント大学歯学部において開発したポリリン酸カルシウムを主成分とした新しい合成移植骨材料の有用性を検討することを目的としてin vivoによる臨床的検索とin vitroによる基礎的検索を計画した。 今年度は所属する研究室で一連の研究を行っている表面多孔質インプラントとこの移植材を同時にウサギ大腿骨に埋入した際の骨伝導能を組織形態学的に解析し、以下の結果を得た。 1.光学顕微鏡下では、術後1ヶ月で骨芽細胞、破骨細胞および巨細胞などが観察され、明瞭に新生骨形成が被検材料内部およびインプラント周囲に認められ、組織為害作用を示すような所見はなかった。しかしながら被検材料の形状に変化はなく、分解、吸収はほとんど観察されなかった。術後3ヶ月ではさらに多くの新生骨形成が認められたが、一部で被検材料の分解、吸収が観察されたものの形状に大きな変化はなかった。牛の骨基質(ポジティブコントロール)では術後1ヶ月、3ヶ月で被検材料と同様な新生骨形成の所見を示し、材料の分解、吸収も認められた。 2.電子顕微鏡によってインプラント周囲における新生骨形成量の面積を詳細に計測したところ、1ヶ月で42.5%、3ヶ月で49.7%の面積占有率であり、ポジティブコントロールではそれぞれ35.6%、50.3%であった。 以上のことから、被検材料は組織親和性が高く、ポジティブコントロールと同レベルの高い骨伝導性も有していると思われた。 来年度は以上の結果をふまえながら、in vitro組織培養による材料の組織生化学的な基礎的検索を行う予定である。
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