研究概要 |
本研究では,織物繊維を強化材としたグリーンシートを試作するとともに,これを積層,焼成することによって成形された織物繊維強化セラミックス(FRC)の焼成収縮率を測定し,FRCの評価を行った. 本研究で作製したFRCの強化材には,炭化ケイ素系繊維,マトリックスにはアルミナを用いた.本研究で用いた炭化ケイ素繊維は平織タイプの繊維であり,繊維径11μm,フィラメント数800,密度2.46g/cm^3である.作製方法としては,まずアルミナ,ホウケイ酸ガラス,エタノール,蒸留水,分散剤,バインダ,可塑剤を加えて長時間ボールミルした.その後,気泡の除去とスラリーの粘度調整を目的として撹拌脱泡を行った。粘度調整したスラリーをドクターブレード法によりキャリアフィルム上に一定速度で流延することでグリーンシートを作製した.グリーンシートは常温で安定するまで乾燥させた後,グリーンシートを三枚積層し,卓上型高速昇温電気炉を用いて,1000℃で焼成することでFRCを作製した.また得られた焼結体の焼成収縮率を測定した.その際,グリーンシート作製時の送り方向,幅方向,厚さ方向それぞれの収縮率を求めた. 結果として,織物繊維を用いた場合のFRCの焼成収縮率は全方向とも0.9%以下であり,マトリックス単体(約8.8%)に比べて小さかった.これはマトリックスの収縮が繊維によって抑制されたためと考えられる.また織物繊維はすべての方向に対して収縮率を抑制することができた. これらのことから,本研究では織物繊維を複合化したグリーンシートを得ることができた.さらにはそのFRC成形体は,焼成収縮率を効率良く抑えることが判明した.しかし二次元構造である一方向繊維と比べ,今回使用した織物繊維は三次元構造をとるため,繊維/マトリックス界面の制御方法やグリーンシートの薄膜化など更なる検討が必要である.
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