摂食・嚥下機能障害は主に脳血管疾患の後遺症の一症状として、また神経・筋疾患に現れることが多い。しかし発症してからの機能の維持、そしてリハビリテーションは困難なことも多く、摂食・嚥下機能の低下を早期に発見し適切な指導と訓練を行うことが重要と考えられる。そのため、摂食・嚥下機能低下の自覚が無い高齢者において、実際にどれほど摂食・嚥下機能が低下しているかを調べるために、高齢者歯科外来に通院する患者に対し、3段階選択方式のアンケート調査を行った。アンケートは短時間で高齢者にも容易に回答が可能なように10項目とし、基礎疾患、咬合状態、口腔乾燥、服用薬剤などの諸条件との相関について検討した。問診により機能の低下が疑われたものには、水のみテストや反復唾液嚥下テスト(RSST)により診査を行った。この調査より、摂食・嚥下機能の低下を自覚しない高齢者においても、実際には機能が低下している者がいることが分かった。そして機能の低下は、単に加齢によって起こるものではなく、疾病や生活習慣などが複合的に影響することが示唆された。 一方、既に摂食・嚥下機能障害を有する高齢者や神経・筋疾患患者に対して、頬、口唇、舌、軟口蓋など、主に口腔領域における機能障害の現れ方を明らかにするための調査、研究を継続している。これらの患者に対しては、食物を用いないで行う間接訓練を中心に訓練プログラムを立案し、機能回復を計っており、介入による摂食・嚥下機能の向上をみとめている。 口腔領域への障害の特徴や程度について把握し、摂食・嚥下動作に寄与する筋群の選定と一連の協調運動への低周波による電気刺激の効果について研究を継続している。
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