まず、骨系統細胞における細胞周期関連因子の関与を検討するために、骨芽細胞、軟骨細胞、破骨細胞前駆細胞にそれぞれの分化誘導刺激を与え、Westernblottingで分析したところ、細胞分化の起こるG1期に機能する分子(CDK2、CDK4、CDK6、サイクリンA、サイクリンD、サイクリンE、p18、p21、p27など)の中でも、CDK6のみが蛋白レベルで強力に発現抑制を受けていることを見出した。蛋白発現抑制に関しては、近年、ユビキチンプロテアソーム系の関与が注目されているため、CDK6抑制現象におけるユビキチン-プロテアソーム系の関与を検討したところ、本現象においては、蛋白分解系の関与は重要でないことが明らかとなった。ついで、分化に伴うCDK6mRNAの変動を検討した結果、CDK6mRNAの発現抑制が蛋白抑制をもたらすことを突き止めた。引き続いて、シグナル伝達経路の解析を行い、分化誘導に伴うCDK6の抑制は、骨芽細胞では、Smadシグナルを、軟骨細胞ではp38シグナルを、破骨細胞ではNF-κBシグナルを介していることを明らかにした。 さらに各細胞内におけるCDR6の機能解析を目的として、細胞にcdk6遺伝子を導入し、CDK6蛋白を安定的に高発現する細胞株を樹立し、それらの分化能および増殖能を比較検討している。骨芽細胞の場合はアルカリフォスフォターゼ(ALP)活性および染色ならびにオステオカルシンのmRNAの発現検討によって、軟骨細胞の場合はタイプIIおよびタイプXコラーゲンのmRNA発現の検討ならびにアルシアンブルー染色によって、破骨細胞の場合はTRAP染色によって、それぞれの分化能を検討している。一方細胞増殖能は、DNAの合成能を評価するBrdUの取り込みで解析し、cdk6連伝子導入によって細胞周期の分布が変化するかを検討するために、FACSによる分析を行っている。
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