研究概要 |
平成15年度の研究では、骨系統細胞分化制御機構における細胞周期関連因子の関与を検討し、(1)サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)およびサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CKI)といった代表的な細胞周期関連分子の中で、CDK6のみが骨芽細胞、破骨細胞および軟骨細胞の分化に伴い、強力に発現抑制を受けていること、(2)それは主にCDK6mRNAの発現抑制によってもたらされること、(3)シグナル伝達経路に関しては、骨芽細胞では、Smadシグナルを、軟骨細胞ではp38シグナルを、破骨細胞ではNF-κBシグナルをそれぞれ介していること、が明らかとなった。それらの成果をもとに、平成16年度の研究では、各細胞内におけるCDK6の機能解析を目的として細胞にcdk6遺伝子を導入し、CDK6蛋白を安定的に高発現する細胞株を樹立し、それらの分化能および増殖能の比較検討を行った。その結果、骨芽細胞、軟骨細胞、破骨細胞の全てにおいて、CDK6蛋白が分化抑制作用を示す一方で、細胞増殖能には顕著な影響を及ぼさないことが明らかとなった。つまり、本研究によって、これまでその細胞増殖機能ばかりに注目が集まっていたCDK6蛋白の新規機能、すなわち「直接的な細胞分化抑制機能」が明らかとなり、その成果は国内外で高い評価を受けた(日本骨代謝学会優秀演題賞受賞、米国骨代謝学会Young Investigator Award受賞、国際学術誌掲載(Ogasawara, T. et al. Mol Cell Biol 24,2004,Ogasawara, T. et al. J Bone Miner Res 19,2004,Moro, T., Ogasawara, T. et al. J Cell Physiol in press))。
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