我々はコラーゲン膜上に構築した上皮シートが粘膜欠損補填材料として有用であると考え、ヌードマウスの皮膚欠損部位にヒト粘膜上皮細胞由来の上皮シートを移植し、良好な結果が得られている。さらに、より臨床に即した実験系としてビーグルの口腔粘膜欠損にこの上皮シートを自家移植として応用しつつある。そのため、まず最初に培養条件の設定を行った。Defined Keratinocyte-SFMという液体培地がビーグルの口腔粘膜由来角化細胞に適するかどうか検討した。ビーグル犬の口腔内より粘膜片を採取し、ディスパーゼおよびトリプシンによる酵素処理を行い、単離した粒膜上皮細胞を上記の培地にて培養した。その結果、培養条件はヒト由来細胞と同様で良く、継代数はヒト由来細胞にやや劣るものの、初代培養や培養二代目では良好な形態を有する角化細胞の培養が可能であった。細胞の倍化時間も約20時間前後でヒト由来細胞との大きな差異は認められなかった。さらに初代培養でコラーゲン膜上にビーグル由来の培養上皮シート作成を試みたが、粘膜片採取後1週間程度でヒト由来細胞とほぼ同様と考えられる単層の培養粘膜上皮シートの作成が可能であった。 この結果を基に、ビーグル幼犬の口腔粘膜欠損を作成し、同部に培養上皮シートを移植する実験系を構築中である。粘膜欠損は硬口蓋の両側に作成し、実験群に培養上皮シートを移植し、対照群にコラーゲン膜のみで被覆したもの作成し、両者間での比較検討を行う予定である。
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