自己PRPは凍結脂肪由来幹細胞の増殖を促進する 顎顔面骨欠損部における治療法の開発として、われわれは自己皮下脂肪から得た間葉系幹細胞を利用する骨再生の研究を進めている。今回は自己多血小板血漿(PRP)を培養液に添加することで、幹細胞の増殖促進因子の添加と、培養時のウシ由来の血清排除という2大問題を解決できる安全で効率のよい培養系の構築を目的とした。自己PRPは、自己血から採取され安全な自己血漿成分であり、多種類の成長因子を含んでおり、すでに臨床面ではフィブリン糊(担体)として多方面で用いられている。今回われわれは、採取したヒト血小板を凝集後、放出した成長因子を含む血漿を培養液に以下の条件で加えて細胞培養を行い、比較した。 1.血漿をそのまま使用(PRP) 2.血漿にトロンビンを加え、フィブリン塊を除去した血清を使用(serum) 3.ウシ血清(FCS) 条件1の培養液は培養後数時間でゲル化した。細胞はこの培養ゲルのなかで、最初の数日間は高い増殖率を示したが、最終的には通常の培養液下における細胞増殖率のほうが高い結果となった。この原因としては、非ゲル化培養液下の過酷な状況下では細胞は生存するため増殖し続けるが、体内環境に近いゲル化という条件下において、細胞状態は安定し、増殖体制ではなく維持体制に変化するためと考えられた。なお培養ゲルはトリプシンなどの分解酵素を用いても容易に溶解せず、安全性、細胞の安定度、非溶解性というメリットを兼ね備えたこの培養ゲルは生体移植時の担体として期待できる。条件2における細胞増殖率は、MTTアッセイの結果は、PRP≧serum>FCSで、PRPとPPPの差は僅差でいずれもFCSより明らかな有意差をもって優れた増殖率を示したことから、細胞増殖にはウシ血清より自己血漿のほうがより効果的であることが判明した。 今後は自己血漿を加えた培養液を用いて細胞培養を行い、生体骨移植直前に自己血清を加えた培養ゲルに細胞を移し、この細胞を含んだゲルごとスキャホールド(担体)として生体内における幹細胞移植を効率よく行う研究を推進していく予定である。
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