研究概要 |
腫瘍切除によって生じた骨欠損を骨トランスポート法によって再建する試みが始まっている。同法は延長距離に制限がないことから,大きな骨欠損の再建が可能となり,また骨採取など,患者に大きな侵襲を与えないという利点から,さらなる臨床応用に期待が集まっている。しかし同法でもってしても,放射線治療後の骨欠損に対しては骨形成が期待できないので,適応は禁忌であるとされている。その一方で,放射線照射後でも骨延長に問題がなかったという報告もあり,その詳細は不明である。 本研究では,これまでの私の実験によって明らかになってきたラット頭蓋骨骨延長モデルを用い,放射線照射後に骨延長を試みることによって骨形成が生じうるか否か,また正常ラットの頭蓋骨骨延長における骨形成と組織学的にいかなる相違があるのかを組織学的手法を用いて検索することを目的としている。 今年度は放射線照射ラットの頭蓋骨骨延長モデルを確立することを主眼に実験を行ってきた。放射線照射後6ヵ月目に骨延長装置装着の手術を行い骨延長を行うことを予定していたが,実験をより簡便にするため,放射線照射直後に装置装着の手術を行い骨延長を行うよう,実験計画を変更した。放射線量は10Gy,20Gyの2群とし,非脱灰標本でマイクロCTによる観察,脱灰標本でH-E染色による形態学的な観察を行った。10Gy照射群では新生骨の量は正常ラットの骨延長時の新生骨量に比べやや少なかったが,骨新生の部位,様相は類似したものであった。一方20Gy照射群では,骨新生が顕著に抑制され,骨延長によって生じた延長ギャップが新生骨によって埋められることはなかった。また骨延長による骨形成に基質小胞の関与があることが分かった。 現在免疫組織化学的な観察を行っており,組織像に相違が生じた原因としてBMPをはじめとした骨形成関連因子の有無,組織内の局在等について検索している。
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