本研究の目的は、ハイドロキシアパタイトの骨伝導性メカニズムとして、疑似体液中での骨様アパタイトの析出能が如何に関与しているかを解明することである。そして、HAPの骨伝導性をさらに促進させるために、最適のα-TCP濃度を明らかにして、より骨伝導性の高いα-TCP-HAP複合焼結体を作製することである。 本年度は、HAP焼結体および1、3、5。10%のα-TCPを含有させたα-TCP-HAP複合焼結体を作製した。それぞれの粉末粒径を測定したのち、粒径10ミクロン以上のものを排除またはグラインドし、粒径1ミクロンのほぼ均一な粒径のものを回収した。加圧形成器も用いてディスク状に形成したのち、800℃で仮焼、5℃/分で1200℃まで加熱し2時間焼結した。試料のもつ表面粗さを測定するため、非接触型表面粗さ測定機を用いて試料の表面粗さを測定した。その結果、α-TCP濃度が高くなるにしたがって若干表面粗さが粗くなることがわかった。 さらに、Kokuboらが開発した無機成分からなる疑似体液を用いて、骨伝導性のスクリーニングを行った。具体的には、HAPおよび各種のα-TCP-HAP複合焼結体を疑似体液中に浸漬し、骨様アパタイトの形成状態を走査型電子顕微鏡を用いて評価した。HAP焼結体に比較して、1、3、5。10%のα-TCPを含有させたα-TCP-HAP複合焼結体のほうが、試料表面上に骨様アパタイトの析出が多く見られた。 以上の結果から、1、3、5。10%のα-TCPを含有させたα-TCP-HAP複合焼結体の作製が可能であることが示唆され、今後の培養ヒト骨芽細胞を用いた実験や実験動物を用いた実験が可能であることがわかった。
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