平成15年度はHAP焼結体およびα-TCPを含有させた各種のα-TCP-HAP複合焼結体を作成した。試料のもつ表面粗さを測定するため、非接触型表面粗さ測定機を用いて試料の表面粗さを測定し、その結果α-TCP濃度が高くなるにしたがって若干表面粗さが粗くなることがわかった。さらにKokuboらが開発した無機成分からなる疑似体液を用いて、骨伝導性のスクリーニングを行った。具体的には、HAPおよび各種のα-TCP-HAP複合焼結体を疑似体液中に浸漬し、骨様アパタイトの形成状態を走査型電子顕微鏡を用いて評価した。HAP焼結体に比較して、1、3、5、10%のα-TCPを含有させたα-TCP-HAP複合焼結体のほうが、試料表面上に骨様アパタイトの析出が多く見られた。 平成16年度は、1、3、5、10%のα-TCPを含有させたα-TCP-HAP複合焼結体を用いて、骨形成能の定量的な評価を行った。具体的には、各種α-TCP-HAP複合焼結体上に骨芽細胞を培養し、その骨芽細胞の分化マーカーについて検討した。その結果、いずれの骨芽細胞の分化マーカーも上昇していた。また、同材料を固定・脱水後、走査型電子顕微鏡を用いて、骨芽細胞の細胞形態学的観察を行ったところ、細胞突起を十分に放出し、よく伸展し、square状の形態をしていた。現在実験動物に同試料を埋入しており、今後は組織学的検討を行う予定である。
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