研究概要 |
われわれは破骨細胞の成熟過程を解明し,炎症や腫瘍などによる病的骨吸収における新たな理解と骨吸収抑制法の開発を目的としている。現在までに,破骨細胞の分化に糖鎖修飾されたセラミド(スフィンゴ糖脂質)は必要不可欠な分子であり、M-CSFおよびRANKLのシグナル伝達に,スフィンゴ糖脂質,特にラクトシルセラミドが重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。このような糖脂質を用いた解析法が,骨代謝疾患の治療に結びつく,骨代謝メカニズム解明に向けた新たなアプローチ法となると考えている。 口腔癌(口腔扁平上皮癌)は高頻度に顎骨に浸潤し、広範囲な骨破壊をもたらし、臨床上重篤な問題を引き起こしている。しかしながら、その骨破壊メカニズムについては不明な点が多く、まずはそのメカニズム解明を行うこととした。 研究対象として、当科で治療した口腔扁平上皮癌症例の組織片およびホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて、RANKLおよびM-CSFの発現についてはRT-PCR法、RANKLタンパクについては免疫組織学的染色法の手法を用い検討を行った。 その結果、口腔扁平上皮癌すべての症例において、PT-PCR法によりRANKLおよびM-CSFのmRNAおよび免疲組織学的染色法によりRANKLタンパクの発現がみられた。すなわち,口腔扁平上皮癌は自らM-CSFおよびRANKLを産生し、これらが破骨細胞前駆細胞に作用し、直接破骨細胞を誘導しうる能力を持っていることが推測され、それにより誘導された破骨細胞が骨吸収・骨破壊を起こしていることが示唆された。
|