研究概要 |
本研究の目的は、顎関節内障患者から採取した関節滑液中の細胞を単離しin vitroにてその性状や細胞画分を調べ、培養により破骨細胞への分化を検討する。また、滑膜組織からの培養滑膜細胞における破骨細胞分化、支持能の有無を調べる。この破骨細胞誘導系を確立し、顎関節内障における関節破壊、骨変形メカニズムを詳細にすることにより、病態解明の一助とすることである。 実験に用いたサンプルは九州歯科大学口腔外科外来、手術室で行われたパンピングマニプレーション、顎関節鏡視下手術、顎関節開放手術に際し得られた滑液、滑膜組織を用いた、まず、滑液中の細胞を単離し、得られた細胞をウシ血清を含んだ培養液中で培養した。これらの培養細胞に液性因子(cytokine, growth factor等)を添加し、4週間培養することにより、多核巨細胞への分化、誘導が認められた。さらに形成された多核巨細胞はTRAP染色にて陽性であり、象牙切片や人工骨(Osteologic)上にて吸収窩を形成したことにより破骨細胞としての表現型、機能を有することが確認できた。これまでの報告では、破骨細胞形成には骨芽細胞や線維芽細胞などの間葉系細胞に発現するRANKLが必須といわれているが、今回の培養系においても線維芽細胞様の付着細胞の増殖が認められ、これらの細胞を単離、継代培養し、刺激を加えると、RANKLの発現が認められ、破骨細胞形成支持能を有することが明らかとなった。今後は、これらの細胞の表現型をさらに詳細に検討するとともに顎関節滑膜細胞における破骨細胞形成支持能についても評価を行っていく。
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