研究概要 |
平成16年度 口腔癌細胞の細胞間接着装置構成タンパク質への低分子量GTP結合タンパク質Rhoの関与とマロチラートの作用機序の検討を行った。 (1)カドヘリンを高発現させたSAS細胞にマロチラート(Malo)10ng/mlおよび20ng/mlで処理し、細胞間接着装置構成タンパク質(コネキシン、オクルーディン、ZO-1)の発現をウエスタンブロティング(WB)法にて検索した結果、いずれの細胞間接着装置構成タンパク質のタンパク量発現の増強は認めなかったが、カドヘリンを高発現していないSAS細胞では発現の増強が認められた。 (2)C3酵素(Rhoの特異的阻害剤)処理したSAS細胞のカドヘリンと細胞間接着装置構成タンパク質の発現をWB法とRT-PCR法にて検索した結果、カドヘリンとコネキシンの発現の減少が認められたが、オクルーディンとZO-1は変化なかった。 (3)C3酵素処理したSAS細胞の運動能をファゴカイネティック・トラック・アッセイで検討した結果、運動能の減少が認められ、Malo 20ng/mlで24時間処理したSAS細胞でも運動能の減少が認められた。 (4)Maloで24時間処理したSAS細胞のRhoタンパク質の発現をWB法で検索した結果、20ng/ml処理で経時的に発現増加が認められ、0,1,5,10,20,100ng/ml処理で濃度依存的にRhoの発現の増加が認められた。RT-PCR法によってもmRNAレベルでの発現に変化は認められなかった。 (5)Malo 20ng/mlで24時間処理したSAS細胞のカドヘリンとコネキシンの動態を共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、細胞膜上に強く発現していた。 本研究の結論として、口腔癌細胞のマロチラートによる浸潤・転移に関わる細胞運動能の減少および細胞間接着装置構成タンパク質の発現増強には、Rhoを介してカドヘリンから細胞間接着装置構成タンパク質への制御が示唆された。
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