研究概要 |
上顎洞挙上に際しては骨移植が必要となるが、上顎洞内への骨移植による治癒に関しては十分な評価が得られていない。骨移植に関して現段階では、自家骨を利用した骨移植が最も優れていることが考えられている。その自家骨移植の治癒は需要側と供給側の状態に影響されているが、組織学的な観点から上顎洞粘膜周囲の研究あるいは上顎骨移植部の治癒経過に関する報告も少なく、さらに動物実験において上顎洞内に自家骨移植を行いその修復経過を調査した報告も皆無に等しい。近年骨移植に際してPRP(多血小板血漿)を併用し良好な結果が得られてきている。PRPは創傷治癒促進作用を有し、これは血小板中に含まれている細胞成長因子の作用によるもので自己血より採取可能で、生体に対して為害作用はなく有用である。しかし従来のPRPの併用に際し、ゲル化において牛血清由来のトロンビン末を使用して併用されていたが、狂牛病などの諸問題より懸念される傾向があり、その代用物の確立が急務となっている。また施設によりPRP抽出に際し遠心分離による回転数の違いが多く、一致した使用法がいまだ確立されていなかった。申請者らは2004年6月19日奥羽大学歯学会において多血小板血漿(PRP)精製過程における円心分離についての検討を発表し2004年12月に奥羽大学歯学誌に掲載した。 結論としてPRP精製にはロータ半径16cmの遠心分離器で毎分1000回転(遠心力180×g),5分間程度の遠心分離を行い、血漿から軟層まで(軟層直下である赤血球層の一部を含める)を採取し、さらに毎分1000回転、5分間程度の遠心分離を行う2回法遠心分離法が適していることが示唆された。
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