研究概要 |
1、口腔扁平上皮癌での所属リンパ節転移におけるVEGF発現とDC浸潤との関連性。 (1)リンパ節転移症例の原発巣と所属リンパ節では、リンパ節非転移症例に比較して、S-100^+ならびにCD1a^+DCの浸潤数は減少していた。しかし、CD83^+DCに関しては逆に増加傾向の結果を得た。統計学的にDC浸潤とリンパ節転移には関連性が認められた。 (2)リンパ節転移症例の原発巣では、リンパ節非転移症例に比較して、VEGF(血管内皮増殖因子)の発現が高い結果を得た。原発巣でのVEGF発現は、統計学的に所属リンパ節転移に関連する一因子である可能性が示唆された。 (3)原発巣と所属リンパ節でのDC浸潤数は、癌のVEGF発現と相関性があることが統計学的に示された。 2、口腔扁平上皮癌培養株化細胞におけるVEGFの検索。 (1)口腔癌由来の癌細胞株(HSC-2,HSC-3,HSC-4,Ca9-22およびKB)にVEGF発現が免疫細胞化学的ならびにWestern blotting法により認められた。 (2)各癌細胞株の培養上清中のVEGF濃度は経時的に増加することがELISA法により確認され、口腔癌由来の癌細胞からVEGFが実際に分泌されていることが示された。 3、DC(樹状細胞)におけるVEGFレセプター(VEGFR)発現の検索。 ヒト末梢血単核細胞から、GM-CSFとIL-4を用いて分化誘導させたDCに、VEGFR(VEGFR-1,VEGFR-2)発現が蛋白ならびに遺伝子レベルで確認された。 4、口腔癌由来のVEGFがヒト末梢血単核細胞からのDC(樹状細胞)分化に及ぼす影響。 (1)癌細胞株の培養上清ならびに合成ヒトVEGF_<165>によりDC分化総数が抑制されることが統計学的に認められた。 (2)癌細胞株の培養上清ならびに合成ヒトVEGF_<165>によりS-100^+ならびにCD1a^+DCの分化総数は抑制されたが、CD83^+DCの分化総数は逆に増加を示すことが統計学的に認められた。 以上、in vivoでの現象がin vitroでも反映されたことが示された。
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