研究概要 |
口腔外科領域において,腫瘍の外科的切除や外傷などによる顎骨欠損に対して,骨移植を行う事は極めて多い.骨移植の移植材料として,自家骨,また,rhBMP-2と人工材料を組み合わせたものも見られる.人工材料であるヒドロキシアパタイトでは再生された骨は力学的に弱く,未だにこれといった移植法がない.ラットの脳虚血モデルにおいて,致死的虚血負荷を受ける前に,臨床応用可能な電磁波刺激を与える事によって虚血に対する保護作用を獲得する事が分かった.このことは,神経細胞に虚血耐性が起こり,神経再生に結び付くのではないかと考え,これらから,適切な電磁波刺激により幹細胞の分化を制御し,特定の細胞種のみに分化させ骨の再生ができるのではないかと考えた.以上,2点を踏まえ,再生をテーマに置き,骨のリモデリングに関与する骨芽細胞を用い,さまざまな電流の電磁波を作用させ比較検討した.電磁波の特性を知るためにラット副腎髄質褐色細胞腫PC12細胞を用いてパイロットスタディを行った.電磁波(Electro magnetic filed)を作用させ,細胞増殖を見たところ,曝露群と非曝露群と比較すると有意差が認められた.これをふまえ,以下の実験を行った. ラット骨芽細胞は,ラット仔(生後1日)の頭蓋骨から採取した.ラット骨芽細胞に電磁波(Electro magnetic filed)を作用させ,24時間後,48時間後,72時間後での細胞の増殖曲線をみた.コントロールと比較すると電磁波を作用させたラット骨芽細胞では,約1.2倍の細胞増殖が見られた. 骨芽細胞に上記条件で電磁波を作用させて,骨芽細胞の分化に出現するアルカリフォスタファーゼ,オステオポイエチン,オステオカルシン,コラゲナーゼのタンパク発現量をウエスタンブロッティングで調べたが,明らかな有意差は認めなかった.今後,これらのタンパクの発現に有意差が出るような電磁波の条件を検索する.
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