唾液腺癌は組織学的分化度が高く、放射線感受性がないかあるいは低い。なかでも腺様嚢胞癌、唾液腺管癌は局所浸潤能が極めて高く、さらに原発巣が制御されているにもかかわらず遠隔転移をきたしやすい。 今回の研究では核内がん遺伝子蛋白質と考えられるレセプターホルモン複合体がどのような発現様式を呈するか、また癌細胞の浸潤能や転移能など悪性度の指標となり得るか、さらには細胞周期チェックポイントにおいて重要な役割を演じている蛋白との関連性を検索・解析し、唾液腺癌細胞の特異性を明らかにすることを目的とした。 唾液腺腫瘍のパラフィン包埋組織を用いてerbAスーパーファミリーであるエストロゲンのレセプター(エストロゲンレセプター;ER)発現を免疫染色により検索を行った。ERは良性唾液腺腫瘍(多形性腺腫)に比べ悪性唾液腺腫瘍(腺様嚢胞癌、唾液腺管癌、粘表皮癌)では高発現していた。またERが高発現する腫瘍では、腫瘍細胞周囲のリンパ球、線維芽細胞にもその発現を認めた。これにより腫瘍細胞と周囲組織ではオートクライン作用ばかりでなくパラクライン作用により腫瘍細胞は増殖・分化する可能性だ示唆された。また増殖因子のマーカーであるKi-67抗体はER高発現症例で高値を示したことから唾液腺腫瘍ではエストロゲンが増殖能に関与することが示唆された。
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