本研究の目的は経脳硬膜超音波ドプラー法を用いて、顎運動の大脳皮質性の制御機構を解明し、不随意性顎運動障害の脳内メカニズムを解明することである。実験に使用したサルは人と同じく雑食性で咀嚼運動のパターンもよく似ていることが知られている。平成15年は顎運動課題をニホンザルに行わせるための慢性実験のためのセットアップを行い、トレーニングを行わせようとしている。また、以前に行ったニホンザルの上肢運動課題施行時に報酬としてジュースを与えていたことから、顎、および舌の運動に関連する脳血流の解析を行った。 その結果、大きな活動の見られた部位は、一次運動野口腔領域、皮質咀嚼野主部、下弓状溝腹側壁、皮質咀嚼野の腹側であった。また、前頭弁蓋の下端にある嚥下関連領域が遅れて活動を開始し、一次体性感覚野、二次体性感覚野がそれに続いた。以上のことより、通常の顎運動における活動部位を同定することに成功した。今後は慢性実験のデータ収集を急ぐと共に、薬物を用いて各顎運動関連領域を局所的、一時的に機能を停止させ、他の部位での活動の変化を行動学的な解析と合わせて行う予定である。
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