研究概要 |
歯周疾患や矯正治療後を含む歯の機能的役割を維持するためには,歯周組織,特にセメント質の修復および再生は非常に重要である.本研究は,歯根吸収後どのような過程でセメント質が修復されるかを組織学的および細胞生物学的に明らかにすることを目的としている. 歯の移動:5週齢雄性Wistarラットの上顎第1臼歯を30gの矯正力で近心移動した. 組織調整:歯の移動開始0,1,2,3,4,5日目に,4%パラホルムアルデヒドで環流固定し,10%EDTAで脱灰後,通法に従いパラフィン切片(矢状断/水平断)を作成した. 免疫組織化学:ABC法を用い,osteocalcin(OC),matrix gla protein (MGP),osteopontin (OPN),transforming growth factor-β (TGF-β)の局在を検討した. In situ hybridization:ラット頭蓋骨よりtotal RNAを調整し,OCおよびMGPに対するRNAプローブを作成した.通法に従い組織切片における各々のmRNAの発現を検討した 以上を検討した結果,生理的状態でも歯根吸収が認められ,歯の移動開始後3〜5日後歯根吸収が惹起された.また,歯根吸収後の修復セメント質において,生理的状態と同様,MGPおよびOPNの局在が認められた.これらの周囲の細胞において,OCおよびMGPのmRNAの発現が認められ,TGF-βの局在が認められた.以上から,セメント質修復過程においてOC, MGP, OPN, TGF-βの関与が推察された. 今後,これらのタンパク質の発現をモニターしセメント芽細胞の分画を行う.
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