当大学内の倫理委員会の許可を受けた上でペルオキシダーゼ活性の高い唾液を持つ人間を当大学内から200名近く調査した結果複数名の該当者を見つけることができた。研究への協力を要請し、そのうちの2名から快諾をえられたので刺激唾液を採取させてもらった。唾液採取には1日のうち定められた一定の時間に採取しており、また精製にはある程度まとまった量が必要であったため少なくとものべにして30日前後を必要とした。このときそれぞれの採取日には測定可能な量だけを採取された刺激唾液から抜き取り活性を酸素発生から測定を行った。その結果誤差はあるもののペルオキシダーゼ活性が高い数値を持つものは高い活性のままで推移しているものと思われる。唾液ペルオキシダーゼ活性はこれまで、前日の食事や体調などに大いに影響があると我々は考えていた。しかしそうした予想を覆し、活性が高いヒトから分泌される唾液ペルオキシダーゼは常に高いことが示された。多くの研究者はこれまでに唾液ペルオキシダーゼには様々な型があり、分子量的にも遺伝的にも多くの差を有すると報告されている。今回精製する過程の中でそうした差はあったが、残念なことに唾液の採取者が2人しかいないのではきわめて個人的なものと評価されることは明らかである。今回は届かなかったがたとえ遺伝子配列的に共通項を見出したとしてもそれは同じである。今回の実験を通じ予想されるのは唾液ペルオキシダーゼは口腔内の様々なタンパク質と結合しているのだが、反応の中心にいたるタンパク質複合体の構造によりその活性の差があるのではないかと思われる。今後は唾液ペルオキシダーゼ-タンパク質複合体をタンパク質末端で切断し大腸菌などにより多量に増幅し、唾液ペルオキシダーゼ-タンパク質複合体の構造を明らかにする必要がある。
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