研究概要 |
研究目的を「歯周病の新しい疾患マーカーとしての活性酸素フリーラジカルの確立」とすることから,(1)ヒト歯肉由来培養細胞から分泌される・活性酸素フリーラジカルの検出と(2)炎症性サイトカインと活性酸素フリーラジカルとの関連性について検討した。今回これまで確立したin vitro ESRアプリケーションを駆使することで早期老化から起こる歯周疾患易感染性を口腔内主徴とするダウン症患者培養歯肉繊維芽細胞からのフリーラジカルの検出にも成功した。また,ダウン症患者歯肉線維芽細胞からのフリーラジカル(ヒドロキシルラジカルHO^・)の産生を示すESRシグナルがESR法により確認された。フリーラジカル産生量(ESRシグナル強度)は炎症性サイトカインであるIL-1β刺激により濃度依存的に増大し,コントロール患者歯肉線維芽細胞に比べ産生量が有意に高まっていた。さらに,ダウン症患者歯肉線維芽細胞からのHO^・の産生は無刺激時においてもコントロール患者歯肉線維芽細胞に比べ高いことを見出した。これらの結果は歯周疾患にとどまらず,ダウン症の疾患メカニズムにフリーラジカルが関与する世界でも始めての直接的な証拠である。すでにInternational Meeting of the Society for Free Radical Research(SFRR) - Asia(Seoul)およびInternational Association for Dental Research(Honolulu)で発表し,前者の学会でOutstanding Paperとして表彰されるという評価を受けた。次年度に臨床的基盤として(3)ダウン症患者の唾液中のフリーラジカルの検出データの集積と,分子生物レベルでの診断をパラレルに行う予定である。
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