歯周炎は細菌感染により発症し、歯肉局所の炎症と歯槽骨吸収を特徴とする疾患である。近年、破骨細胞の分化を誘導する因子として破骨細胞分化因子(RANKL)の発現と骨吸収との関連が注目を集めている。しかしながら、歯周病変局所におけるRANKLの発現については未だ不明な点が多い。 本研究では、歯周病変局所における歯周病原性細菌の存在がRANKLの発現と骨破壊に与える影響を解明することを目的とし、ラット第一大臼歯の遠心根管を抜髄開放することにより自然感染による根尖性歯周炎の成立をはかるとともに、歯周病原性細菌であるPorphyromonas ginivalis(Pg)を添加した場合の影響について免疫組織化学的解析を行った。 その結果、自然感染で病変を発症させた場合、抜髄後7、14日目では根尖病巣中にIL-1を発現したマクロファージの著しい浸潤を認め、骨面には破骨細胞が多数観察されたが、その後経時的にIL-1発現細胞および破骨細胞数は減少し、骨面では多数の骨芽細胞が配列した所見が認められた。 一方、上記自然感染の実験系の14日目にPgを添加した場合、実験期間全般にわたり病巣中に著しいマクロファージの発現が認められるとともに、多数のIL-1発現細胞及びRANKL発現細胞が継続して認められ、骨面では多くの破骨細胞が観察された。また、Pg留置後T細胞は、経時的に増加傾向を示した。RANKLの発現は単核円形細胞に認められ、マクロファージあるいはT細胞であることが推察された。 これらことより、Pgを根管内に添加した実験系は、T細胞による破骨細胞活性化機構ならびにIL-1とRANKLのクロストークについての解析に有用である可能性が示唆された。
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