研究概要 |
平成15年度では,ヒト単球系細胞株であるTHP-1細胞を用いた感染実験を行い,感染後の細胞動態をアポトーシスの観点から検討した。その結果A.actinomycetemcomitans Y4株を感染させたTHP-1細胞では非感染細胞と比して,LDH活性は有意に上昇していた。またアポトーシス細胞の特徴のひとつである細胞内のDNA断片化の増加が感染細胞において認められた。さらに感染THP-1細胞において断片化DNA所見(ラダーパターン)が2%アガロースゲル電気泳動により確認された。感染後24時間および36時間と経過するにしたがい,感染細胞におけるカスパーゼ3活性の上昇が認められた。次に,A.actinomycetemcomitans感染によるTHP-1細胞のp38活性について検討したELISA法およびウェスタンブロット法のいずれにおいても,非感染細胞に比して感染細胞におけるp38活性の上昇が認められた。さらにp38活性阻害剤であるSB203580を添加したところ,非添加感染細胞に比してp38活性の減少が認められた。また,A.actinomycetemcomitans感染によるTHP-1細胞からのTNF-α産生について検討したところ,A.actinomycetemcomitansの感染によりTHP-1細胞からのTNF-α産生は増加した。また,感染によるTNF-αの産生は,SB203580の添加により減少することが示された。 以上の結果から,A.actinomycetemcomitans感染ヒト単球細胞においてもアポトーシスによる細胞死が発現することが明らかになった。さらにこのアポトーシス誘導にはp38といったMAPキナーゼによる細胞シグナル伝達系が関与し,またこのp38は感染細胞からのTNF-α産生に関与している可能性が示唆された。
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