我々のこれまでの研究によってNd : YAGレーザーには神経線維の活動電位伝導を可逆的に抑制することがわかった。さらに神経線維に墨汁を塗布することにより伝導抑制効果がより得られることもわかり、疼痛緩和効果を得るには臨床応用時に墨汁を塗布することが有効という結果と一致した。これまで実験に応用した神経線維を用いた方法による報告は少なく、検索すべき項目は多数ある。本研究の大きな目的であるNd : YAGレーザー治療における安全基準の確立は、当然のことながら照射距離、時間、出力、スポット照射の有無等、数多くの要素を解明してはじめて成しえるものである。 今回の研究では臨床的にいわれている「スイーピングモーションの必要性」に対して、神経生理学的検索を用いた。成体アフリカツメガエルより取り出した触角神経束を標本として固定し、神経束の活動電位を銀線電極にて導出した。オシロスコープ、AVモニターで観察しつつ、触圧1gfのシュロの繊維を用いて触刺激を与え、スパイクカウンターで触刺激による活動電位頻度を計測、さらにペンレコーダーにて記録した。Nd : YAGレーザー照射前の触刺激応答を計数記録し、照射後の変化を記録した。照射する際にスポットファイバーを固定した場合とスイーピングモーションにより照射した場合とで比較した。一般に臨床的にはファイバーを固定せずに照射すべきであるといわれているが今回の研究によりこの必要性の有無の検索が行えた。多数の臨床経験に基づく照射方法の確立はきわめて重要であるが、基礎的研究による安全基準の確立はレーザー治療の可能性をよりひろげるものであり欠かせないと考える。次年度以降も基礎的検索を継続しレーザー治療の安全ガイドラインの確立に役立てたい。
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