研究概要 |
現在、本邦における骨粗鬆症患者は、1,000万人を超えるといわれており、骨粗鬆症について診断システム、治療法、予防法などが、内科や整形外科などを中心に産学協同で精力的に研究されている。しかしながら、骨粗鬆症が顎・口腔領域に与える影響に関する報告は少なく、骨粗鬆症が顎・口腔領域に及ぼす純粋な影響についてはほとんど明らかとされていない。 そこで、本研究では、環境要因や遺伝的背景がほぼ同様で,ヒトに類似した顎口腔形態およぴ機能を有するサルを実験モデルとして用い、骨粗鬆症が顎・口腔領域に与える影響を明らかとし、さらに、得られた基礎的データをもとに、口腔の変化から骨粗鬆症を早期に診断するための診断基準の確立を目指す。 これまで我々は、卵巣摘出術群(OVX群)9体,開腹術のみの偽手術群(SHAM群)9体のカニクイザル顎・顔面標本を対象に、頭部規格X線写真、X線CTを用いて骨粗鬆症が顎骨に与える影響について検討し、下顎臼歯根尖部の海綿骨でOVX群はSHAM群に比べ骨塩量が低下すること、また、下顎頭の海綿骨でOVX群はSHAM群に比べCT値が低下することを明らかとした。これは、顎骨においても他の体幹骨と同様に卵巣摘出によって骨が脆弱化すること、また顎骨の部位によってその程度に差がみられることを示唆するものである。 現在、デンタルX線写真、軟X線写真、マイクロCTを用いて、骨粗鬆症が顎・口腔領域に及ぼす影響について詳細に検討中である。
|