研究概要 |
本研究の目的は、ポータブルタイプの超音波診断装置(以下USとする)を用いて、ベッドサイドなど様々な条件での摂食・嚥下障害者に対する舌、舌骨の機能評価手技を確立することである。初年度は環境整備が中心となった。研究実績の概要を下記に示す。 1.USプローブの選択 現有のポータブルUS(オリンパスSonoSite 180PLUS)用プローブのうち、顎下部から舌背面を描出するのにもっとも都合がよいものは、形状がコンパクトなため比較的顎下部に設置しやすいマイクロコンベックスプローブ(オリンパスC15/4-2,新規購入)であった。同プローブの場合、腹部用に比べ描出範囲が若干狭いことから、矢状断では舌前方部から舌骨相当部まで一度に描出することは不可能であるが、ターゲットを絞ることにより対応が可能であった。 2.US固定装置の開発 眼科での眼圧測定器の改造によるUS固定装置を開発した。一定の舌断面の運動観察のためには、プローブと顎との位置関係を一定にする必要があるが、本装置は楽に頭部固定が得られ、かつ顎運動にあわせてプローブが可動するように設計されており、比較的ADLの良好な対象者や、コントロール群の観察時に有用であった。なお、同装置が使用不可能な対象者は、基本的にプローブはフリーハンドとし、このような環境下でも解析が可能な評価方法について検討を行った。 3.評価方法の検討 評価方法は、スクリーニング法として既に確立している段階的フードテスト(FT)、ならびに反復唾液嚥下テスト(RSST)施行時の舌矢状断、前額断面についてみた。その結果、FTではテスト食による舌運動性の違いが評価可能であった。RSSTは30秒間空嚥下を繰り返させ、回数により評価を行う手法であるが、安全性が高く、再現性に優れた舌運動評価が可能であった。 次年度は今回得られた手法を、様々な摂食・嚥下障害者に行い、最終的に評価用カルテとして一般化する予定である。
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