研究概要 |
本研究の目的は,在宅酸素療法(HOT)患者の支援システムを構築することで,患者のQOL全体の向上につなげることにある。また,支援システムを活用し,医療情報の提供を促進することで,患者の疾患・治療に関する理解を深め,HOTに関する事故防止と,疾患の急性増悪を予防する。そのため,本年度はまず,呼吸器疾患特異的なQOLの調査票,および包括的なQOL調査票を吟味・選択し,調査票の作成を行った。また,それを使用し,支援システム未組織地域のHOT患者とそれを支える家族介護者の調査を行った。 (1)本調査に協力の得られたHOT患者対象者(30名)は高齢者が多かった。また,主疾患は慢性閉塞性肺疾患が多く,過去喫煙者が多かった。 (2)対象者の日常生活状況を見ると,電話の使用や金銭管理は高い割合で自立が見られたが,買い物や移動に関しては約半数が何らかの援助を必要としていた。 (3)対象者のQOLをVAS-9の指標で見たところ,酸素吸入に対してはやってよかったと評価が高かったが,社会参加や家事・仕事に関しては参加度が低く,自らの評価が低い状況であった。その他,主観的に見た体の調子や気分は中程度であった。 (4)対象者をサポートする家族(30名)のほとんどが配偶者(妻)であり,高齢者が多かった。 (5)家族介護者は患者が医師から説明を聞く時に同伴しているものは少なく,また患者と共に外出しているものも約半数であった。 (6)家族介護者は,患者の急変時の対応や,将来に対する不安感を持っていた。 今回の調査により,HOT患者は,社会的活動,および家族での役割分担に対する達成度が低い傾向にあった。また,家族介護者も患者をサポートする上で何らかの不安を抱えている状態が明らかとなった。そのため,次年度ではHOT患者サポートシステムのあり方を検討し,患者支援システムの構築の基礎作りを行っていく予定である。
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