研究概要 |
本研究の目的は,在宅酸素療法(HOT)患者の支援システムを構築することで,患者のQOL全体の向上につなげることにある。また,支援システムを活用し,医療情報の提供を促進することで,患者の疾患・治療に関する理解を深め,HOTに関する事故防止と,疾患の急性増悪を予防する。前年度は,既存のQOLと作成した調査票を使用し,支援システム未組織地域のHOT患者とそれを支える家族介護者の調査を行った。今年度は,現在呼吸器障害者に支給されている福祉サービスの現状を把握するために,市町村の福祉サービス提供状況を調査した。また,呼吸器障害者は福祉サービスをどの様に利用し,どの様な期待を抱いているのかについて,在宅酸素療法患者に面接調査を行った。それにより,以下のことが明らかになった。 1.同県内の市町村によって,提供されている福祉サービスに差が見られた。 2.在宅酸素療法患者は身体障害者3級認定がもっとも多く,次に1級であった。 3.家族と同居していた対象者が多かったため,ホームヘルパーやデイサービスの利用率および希望は低かったが,自動車改造の助成や家族名義の自動車も対象に加えてほしいとの要望が強かった。 4.電車等の公共交通機関を利用していたものは非常に少なく,HOT患者の公共交通機関での移動の難しさが示唆された。また,福祉タクシーは基本料金のみの援助になるが,多くの場合基本料金内では目的地に到着できないとの理由から,福祉タクシーを利用するものは少なかった。 5.所得税等の税金の免除が受けられることを知っていながら,手続きが非常に面倒という理由で免除を受けていないものがあり,障害者,とくに高齢の障害者への手続きの簡易化や援助が必要であると推測される。 6.酸素吸入器を使用するにあたり,住居の改修工事が必要なものもあったが,HOT利用者は住居改修の援助はなく,サービスに加えてほしいとの希望が強かった。 7.酸素濃縮機にかかる電気料については,補助の対象外なので,サービスに加えてほしいとの意見が聞かれた。
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