本年度は、悪性骨軟部肉腫患者の情報に対するニーズを把握するための面接調査の実施及び情報提供のための基礎資料の収集を行った。 面接調査では、がん専門病院に入院中の悪性骨軟部肉腫患者20名を対象に、『医療情報に対する認識や行動』に関する半構成的面接を行った。なお、本調査は対象病院の倫理委員会にて審査を受け承認を得ている。対象者へは、研究の目的と方法、拒否する権利や中断の自由、利益とリスク、プライバシー保護等を口頭及び文書により説明をし同意を得た。面接はカルテ等で対象者の身体・精神状態を把握した上で行い、面接中及び面接後は表情や言動、症状悪化の有無等の観察を行った。面接内容は対象者の許可を得てテープに録音し、その逐語録をもとに内容分析を行った。主な結果を以下に示す。1)悪性骨軟部肉腫に関するメディアからの情報はほとんどなく、患者は必要な情報を十分には得られない現状にあった。2)不足している情報としては、悪性骨軟部肉腫の疾患や治療に関する情報以外に、疾患や治療に伴う症状への対処法、社会的支援、医療者との関わり方等が挙げられていた。3)患者の情報に対する満足度には、医療者の情報提供の仕方、タイミング、精神的配慮等が影響していた。4)看護師を情報提供者として認識している人はほとんどいなかった。調査結果については今後学会誌等に投稿する予定である。 基礎資料の収集では、国内の雑誌や新聞、インターネット等のメディアから、実際にどの程度、悪性骨軟部肉腫に関する情報が得られるかを調査するとともに、疾患、治療、副作用や後遺症、社会資源や制度、症状コントロールに関する国内外における文献や資料を集めている。 次年度は、得られた資料を整理し、面接調査の結果や文献、医療者の意見やインターネットによる情報提供の状況を踏まえて、どのような情報を提供していくかを検討する。次に、検討した内容をもとに、悪性骨軟部肉腫患者とその家族を対象としたホームページを作成し、看護の視点から情報提供を行っていく予定である。
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